2025年7月12日(土)

その夜は、家と慣れ親しんでいた全ての物を置いて避難してきたそのテントの中にいました。そこは私にとっては、初めての場所ということもあり、体は極限まで疲れているのに、目を閉じて眠ることが出来ませんでした。その時の気持ちは言葉に出来ないほど胸を押しつぶされるぐらい重く、息ができないほど苦しいものでした。安心できる瞬間は一ときもなく、心を休められる一ときも見つけられませんでした。私は子どものころから新しい場所に慣れるのが苦手でした。ましてや、死から逃れるために飛び込んだこんな避難場所で、どうして心を落ち着けることができるのでしょうか。

私は、この場所がどれほど危険なのか考え込んでしまいました。イスラエル軍は人々にここから避難するよう繰り返し命じています。でも、私たちはどこへ行けばいいのでしょうか?他に行くことができる選択肢はなく、この小さな地面しか残っていません。破れたテントを張れるのは、ここにしかなかったのです。私は「きっと大丈夫」と自分に言い聞かせ続けました。しかしその夜、遠くから迫る戦車の轟音が静寂を打ち破りました。胸が高鳴り、呼吸が速くなりました。やがて空から照明弾が降り注ぎ、暗闇を切り裂き、夜を冷酷な偽りの昼に変えるほどの明るさとなりました。テントが光に包まれ、私たちの顔は照らし出され、その表情の一つひとつに恐怖が刻まれていたのが見えました。

震える足でテントの外に出ると、空はまぶしいほどの白い光に照らされ、まるで「死の嵐が近づいている」と告げているかのようでした。近くのテントからは小さな祈りのささやきや誰にも聞かれまいとする、押し殺したようなすすり泣き声が聞こえてきたのです。

そのとき、「また避難しなければならないのだろうか?」「あのときのように兵士たちと顔を合わせてしまうのだろうか?」「彼らは私たちの家を壊したように、このテントも壊してしまうのだろうか?」と恐ろしい問いが頭をかすめるのです。

恐怖が四方八方から迫ってくるのを感じました。足もとの地面はもう安全に思えず、頭上の空も私を守るどころか脅かしているように感じられました。空気さえ重く、恐怖の匂いでいっぱいでした。私は落ちてくる照明弾を見つめながら「この光は新たな爆撃の合図なのだろうか」「この夜が明けるのを生きて迎えられるのだろうか?」「それとも、これが私たちの見る最後の夜になるのだろうか?」と考えたのです。

私は震えながらテントの中に戻り、照明弾の光が消えた後の暗闇の中に座り込みました。その暗闇は、偽りの光よりもずっと優しく感じられました。戦車の音がやんだ後の静けさは、嵐の前の静けさのようで、かえって恐ろしく感じました。私は頭を両手で抱え、気持ちを落ち着けようとしましたが、涙がこぼれてきました。戦争は爆弾で人を殺すだけではありません。絶え間ない恐怖や、終わりが見えない時間、そして死が一歩一歩近づいてくるという残酷な感覚で私たちを追いつめているのだということを、その時気づいたのです。


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