2025年9月18日(木)

この美しい朝、空気は違っていました。柔らかく優しく、珍しいほどの静かでした。陽光には母の抱擁を思わせる温もりを感じました。私は軽やかな気持ちで目を覚まし、静かな喜びを感じていました。まるでこの日が、恐怖と戦争の喧騒から解放されるかのように感じました。さらに特別なことは、家族が皆そばにいてくれたことです。私の祖母も一緒にいました。

戦争が始まって以来、私は祖母にきちんと会い、以前のように一緒に座ったりできませんでした。私たちは、避難を余儀なくされ、恐怖と共に生き延びるために離ればなれになっていたのです。しかし今日は違いました。今日は祖母がここにます。私たちの間に座り、その瞳は優しさに満ち、その声には私が深く恋い慕っていた過去の思い出が宿っていたのです。

一緒にモロヘイアの葉を摘みに行こうと祖母に提案すると、祖母の顔がぱっと明るくなり微笑みながら言いました。「そうね。行きましょうか。昔も楽しかったからね」と祖母の言葉は、そよ風のように感じられました。

私たちは並んで座り、指で緑色の葉をさわると、笑い声が響き渡りました。祖母の手を見つめると、年を取った手であり、柔らかく、そしてしっかりとした手で人々に与え続け、慈しみの年月を背負った手でした。一瞬、私はとても安心感を覚え、まるで子どもに戻ったように、彼女の隣に座りました。外の環境では得られることが難しい平穏な雰囲気に包まれていました。それは普通の光景なのですが、色々なことがある人生の中では、とても意味のある貴重なものだと思いました。しばらくの間、私は、爆撃の音も、戦闘による破壊のことも忘れることが出来ました。そこにはただ、私と祖母、そしてモロヘイアだけが、朝の光に照らされて緑色に輝いていたのです。

作業をしながら、彼女は昔話を語り始めました。かつての生活はどんなに素朴だったことか。人々はわずかなもので満足していたこと、隣人たちは一つの家族のように暮らしていたこと、そしてこの土地がかつて笑い声と希望とオリーブの木に満ちていたことを話してくれました。彼女の目は語りながら輝き、声はわずかに震えていました。まるで時間と共に消えゆく記憶を必死に掴もうとしているかのように見えました。

それから彼女は長い間黙り込み、ほとんどささやくような声で静かに語りました。

「私の大切なサバラ、今の生活は以前よりずっと厳しい…ナクバの時代よりもずっと厳しいのよ」

祖母の言葉が私の胸に突き刺さりました。祖母の顔を見ると苦難と悲しみの年月が刻まれたその顔に、彼女の瞳に、幾世代にもわたる戦争と流浪の歴史の重みが浮かんでいました。

私は心の底から思いがこみ上げて来たので、何を言えばいいのかわからなくなりました。ただ手を伸ばし、祖母の手を握りしめ、囁くことしかできませんでした。

「神の御心のままに。おばあちゃん…いつか私たちに平和が訪れると思います。いつかまた、以前のように生きられると思います。恐怖も戦争もない世界に。」

彼女は優しく微笑みながら、両手で葉っぱを弄り続け、心の中に優しさと忍耐がある限り、その日は必ず訪れると語りました。

その瞬間、私は祖母が思い出以上のものを抱えていたことに気がつきました。

祖母は、揺るぎなく深い信仰を抱いていました。人生はいつだって再び道が開けることを強く信じていました。祖母は私たちの家の「源」であり、私たちの物語を守り続ける人でした。その魂は決して枯れずにこの土地に生き続けていたのです。

その日の夕方、祖母は昔と同じように、愛情のこもった手でモロヘイヤの料理を作ってくれました。モロヘイヤの香りは家中に広がり、温かさと安らぎで家を満たし、まるで思い出に包みこまれるような感じがしました。私たちは祖母の周りに座り、笑いながら一緒に食事をしました。そのひと時だけは、祖母の思いやりと、彼女の口から自然にでる祈りの言葉、そして世界がもう一度安全であるように感じさせてくれるあの優しい笑顔によって、壊れてしまった時を少しずつ直してくれているように感じました。

その日は永遠に私の心に残ると思います。懐かしさと愛情、過去と現在、廃墟と温もりを同時に感じる一日でした。祖母とこうして短くても一緒に過ごす時間は、厳しい環境の中で長い間平穏な日々を忘れていたので、この貴重な安らぎの瞬間は、まるで小さな奇跡が起きたように感じました。


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