その朝、私は静かに座っていました。考えごとなどは、秋の風に飛ばされる木の葉のようにあちこちに散らばり、疲労困憊している私の心はつぶされそうな思いでした。ぼんやりとこのむなしさに向き合い、そこからの逃げ道となるような小さな窓を探していました。そのような静けさの中で、突然優しい温かい声が聞こえてきました。「こっちに来て、一緒に遊ぼう」という声でした。
その声の方を振り向くと、ヤヒヤという小さな男の子がいました。彼は、きらきらと輝く瞳で世界中の無邪気さを一気に集めたくらいの笑顔を見せる子でした。彼の手には、遊び過ぎて古くなってしまった一番大切なおもちゃがありました。小さな足で私の方にやってきて彼の柔らかい小さな手で、私の手をとりました。不思議とその手の温もりには、安心感が沢山詰まっているように感じたのです。
私はとても疲れていたのですが、笑顔で彼に連れて行かれるままにしていました。テントの外にある小さな草の上に一緒に座ると、優しい風が吹いていてこの時が恵みの時のように感じました。まるで戦闘もテント生活も貧しさも一切ないかのように、彼のおもちゃで一緒に遊び始めました。
短い時間ではありましたが、心から笑うことができました。子どもの頃に戻ったかのように長い眠りから古い魂の一部が目覚めたように感じました。ヤヒヤの笑声、無邪気なしぐさを見ているとその一つひとつが私の心を軽くしてくれるように感じたのです。ヤヒヤの無邪気さが、こんなに短い時間の中で、私の深い悲しみを解放し、優しい喜びの岸辺に連れ戻してくれたように感じました。その時は、姉としてでもなく、責任を持つ女性でもなく、戦闘を生き抜く者としてでもない自分がいたと思います。ただの子どもに返ったように笑って遊んで全てを忘れることができたのです。その時、子どもたちは、誰も持っていない特別な魔法を持っていることに気がつきました。その魔法は、人にもう一度「生きている」ことを知らないうちに実感させることができるものでした。その日、ヤヒヤは私に笑顔をくれました。彼の古びたおもちゃが、私がずっと探し求めていた幸せの扉を開ける鍵だったのです。
