長い間のつらい思いや不安定な状況の中でも精神的に耐えてきたのですが、先の見えないこの不安のスパイラルから抜け出したいと強く感じました。この不安な気持ちから抜け出すために外に出て深呼吸をしたかったのです。どこに行きたいかは、はっきりとは分からなかったのですが、自然と向かった場所は私にとってガザではとても安らぎが得られる海岸でした。
友だちに電話をかけ、震える声で「会って、話がしたいの」と伝えると、彼女はすぐに「分かったわ」と答えてくれたので海岸で会うことにしました。
その日はとてもうれしい気持ちで一杯になりました。長い間会えなかった友人にやっと会えること、そして青い波を見ることが心からとてもうれしくなって、疲れてはいたのですが、きれいに身支度をしてわくわくしながら出かけました。
友人に会った瞬間に過去の思い出を噛みしめ、強く抱きあいました。そして、波の方を向いて砂浜に座り、なんでも語り合いました。そして言葉がない時は、その静けさを大切にしました。笑ったり、泣いたり、お互いの痛みを受け入れて、この過酷な運命の中を互いにいたわり合う事としたのです。
しかし、その喜びも長くは続きませんでした。イスラエル軍は私たちのこのほんの少しの安らぎさえも許してくれないからです。
イスラエル軍の軍艦が、海岸に向けて銃撃を始めたのです。私は、心臓が震え、時間が止まった様に感じました。足は石のように固まり、体も自分の物ではないかのように動かず、恐怖ですくんでしまいました。
友だちは私の手をしっかり握り「走って!」と叫びました。まるで死がすぐ後ろに迫ってくるかのような無差別に降り注ぐ銃弾の中を逃げました。
笑顔とやさしさで始まったこのひと時は一瞬にして恐怖と涙の時間へと変わってしまいました。それは、日々積み重ねてきた長い痛みの記録はこうして私たちが生き延びた瞬間として新たに刻み込まれました。
