今日は自分専用の小さな衣装棚を作ることにしました。私は、この環境から逃れられないので厳しい現実を受け入れてきました、私は、このテントで生きていく運命にあるのかもしれません。
テントで暮らすという事は、ただ不便なだけではありません。少しずつ静かに死に向かっていくような気がするのです。快適さ、プライバシー、心の平和が毎日の中で少しずつ削られていくのです。
それでも、私は強くありたいと思いました。自分のために、家族のために、国のために。
例え、すぐに折れてしまいそうな強さであっても大切にしたいと思います。
正午ごろは、太陽の強い日差しで辺り一面がとても暑くなっている時、私はふと思いついたことがありました。何か一つでも生活を楽にしてくれる物が欲しいと思いました。例えば着換えをするたびに、いくつもの重いバックを運び、埃の中から一枚の服を探さなければならないのです。そのために私は、少しでも苦労を減らすために何かを作ろうと決めたのです。
テントの両端にある支柱の間にロープ2本を張り、釘で固定して安定させました。袋の中から服を一枚ずつ取り出して、出来る限りきれいに並べて掛けてみました。私だけの「クローゼット」が完成です。簡素で仮のものですが、私だけの「クローゼット」です。
しかし、この小さなことを達成したことには喜びを感じるどころか、拭いきれない悲しみが私の心をよぎりました。
私は、ワードローブを持っていました。以前はそれが自分の部屋にありました。服をきれいに畳んで、自由に部屋を歩いて、問題なく服を選ぶことが出来たのです。
今の私にあるのは、布の切れ端をつなぎ合わせて作った、仮の住まいだけです。
それなのに、ロープと釘で作った小さな「洋服かけ」を完成させただけで、自分でも驚くほど、心の中に小さな喜びが広がったこと、こんなにもささやかなことが、まるで大きなことを達成したように思えること。それが、今の私の現実です。
こんなに簡単なことが、夢だなんて、どんなに悲しいことかと思います。
何もないところから何かを生み出すことには誇りを感じますが、こんなにもその意味を重く感じるとは思いませんでした。
それでも私は、何かを生み出そうとしています。
今も、ささやかな方法で、物を作り出す時を大切にしたいと思っています。
なぜなら、私は、この現状に絶対に負けたくないので。
