2025年6月12日(木)

テントの中を整理するのはとても大変な作業です。灼熱の強い日差しの中で体力を使い果たし、服も汗でびっしょりになってしまいます。今夜はシャワーを浴びることにしました。本来ならだれもが当たり前に出来るはずのその簡単なことでさえ、ここでは生きていくためのもう一つの試練になってしまうのです。

水―生きるために一番大切なもの-が、今はとても貴重なものになってしまいました。体を洗うための水を手に入れるだけでも、水のトラックがキャンプに来るのを待たなければなりません。私たちは皆、そのトラックが来ると命綱のように思い、走って行きます。

炎天下の中、長い列に何時間も並びます。疲れ切って、喉が渇いて,力も出ないけれど、それでも手に持ったペットボトルやバケツを、まるで希望そのもののように握りしめているのです。

やっと、私の番がきてもここからが本当の闘いの始まりです。もらった水は、氷の様に冷たくて、肌を突き刺すガラスの破片の様に感じます。既に疲れ切って弱くなっている私の体には、その冷たさはあまりにも過酷です。お湯を沸かす電気や火をつけるガスもありません。快適さなど全て奪われて、今あるのは自分たちが考えて工夫したものだけです。私たちはそれで生き抜くしかないのです。

そこで、原始的なのですがとても良い方法を考えました。水を入れた容器を直接太陽の下に何時間も置いて、太陽の熱でゆっくりと温める方法です。これは、入浴のためだけではなく、調理のため、食器を洗うため、さらに目に見えない傷を洗うためのものでもあるのです。が、温かい水を創るための新しい知恵です。今や太陽は、湯沸かし器であり、医者であり私たちに唯一の温もりといのちを与えてくれる源です。

これが私たちのガザでの生活です。シャワーを浴びたいと思うたび、人間としての基本的な権利を得るための困難な旅に出なければならないのです。それは、私にとっては試練です。水を得ることは、人としての尊厳のため、わずかな安らぎのため、決して失ってならないものであり、それは日々戦いなのです。

生きることは本当に大変です。

人間らしくありたいだけなのです。


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